第2回政党・政治団体と市民との討論会(2013-12-1) 報告
【日時】12月1日(日)1時半~4時20分。
【場所】東別院会館2F 蓮・橘
1.活動経過報告:藤井(別頁参照)
2.基調講演「〈憲法〉をめぐる情勢」:中谷弁護士(市民の会)
(1)明文改憲(自民党の改憲草案
@天皇を元首にした復古調のもので、9条を否定。基本的人権を制限しやすくする。
@日本の国家像を大きく変えるもの(自民党のつくりたい国家像)。
@96条を改定して、ハードルを下げて改憲をしやすくしようとしたが、予想以上の反発(改憲派からも立憲主義に反するという批判)があり、取り下げる。
(2)解釈改憲(迂回戦術)
@内閣法制局長官を、集団自衛権を認める憲法解釈をする小松にすげ替えた。
@従来の政府解釈では、自然権としての個別的自衛権は憲法上も認められているが、集団自衛権は憲法で認めていないと考えてきた。第一次「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)メンバーを集めて答申させ、今月中にも集団自衛権を閣議で認めようとしている。
@その上で、国家安全保障基本法案を提出し、それを成立させて改憲をしないで集団自衛権を行使できるようにしようとしている。
(3)立法改憲
@日本の基本的な方向を4人で決めようとしている(日本版NSC①:首相、官房長官、外相、防衛相。事務方には自衛隊(軍隊)、警察官僚)。
@NSCに入る情報を管理するという名目で特定秘密保護法②を成立させようとしている。同様なものを今までも何度も出してきており、本質は治安立法・弾圧立法である。国民の人権と衝突するのは明らか。
@戦争をする国・できる国にするものであり、憲法に反するもの。来年に出て来るであろう国家安全保障基本法案③、この3つの中で一番本質がわかりやすのは②。これを全力でつぶすべきであり、そのことにより3つの環をつぶすことができる。
@憲法体系に相反する安保法体系というものができてきたが、ここにきてそれがさらに肥大化されようとしている。軍事法体系が膨大化してきている。
@近代刑法は(目的如何に関わらず)行為で処罰する。戦前、暴力団対策といって法律を作り、労働運動などを弾圧してきたが、今同じようなことをしようとしている。
(4)民主主義の機能不全と国際(人権)法の逆流現象
@制度的要因としては、①まず選挙制度が民意を反映しない小選挙区制。民主主義は議会制民主主義に限定してはいけない。
②最も言論が自由でなければならない選挙の際に、公職選挙法で言論が厳しく取り締まられているのは問題。
@社会的な要因としては、①労働組合の力量低下。戦後政治と個人を結ぶ中核的役割を果たしたが、原点を忘れているのではないか。正規従業員の組合員の権利を守ろうとするだけの存在ではよくない。
②様々な政策により、企業内でも地域的においても個人がばらばらにされている。個人情報保護法も、社会内の連帯の手段である情報交換の手段を奪われた(名簿配布の自己抑制など)。
@国際的には、アメリカの侵略行為を禁止できず、侵略行為禁止が事実上棚上げになっており、国際人権法の逆流現象が起こっている。
(5)今後、どうすべきか?
①国際的には、不十分であるが国際法特に国際人権法を守らせる民衆の連帯・運動が重要。
②前述した制度的要因の解消を目指す運動の必要性。
③新たな中間団体としての市民運動の役割が重要。適切な方法で訴えていけば、市民に声を届けることができる。また、市民運動側が政治・政党に働きかけられる力量を持って欲しい。政党は、政策に違いがあっても、国民の声を届けて欲しい。
④この運動は日本の民主主義に新たな展望を与えている。特定秘密保護法案を全力で阻止しよう。
3.各政党・政治団体からの意見表明
(①7月参院選の総括、②3年後の参院選愛知選挙区で「憲法改悪を許さない」「脱原発」を掲げる候補者を送り込むことに向けての考えについて)
(1)社会民主党愛知県連合伊藤幹事長
@社民党が小さくなり、全国的には選挙活動ができなかった地域もある。選挙後福島みずほ党首は辞任。一つの曲がり角。県内では、色々総括議論をし、8日に決定する。
@統一候補・共同候補については、社民党の中でもそういう意見は沢山あったが、今回候補者を出さないと社民党が消えてしまうということで独自候補を出した。総括の中でも、やっぱり統一候補がいいね、という声がある。
@3年後の選挙では、吉田党首、福島前党首が改選となる。最後の一戦になりかねない。その中で、愛知で出さなくてもよいのかという声が出てくる。市民の会と連携して考えていきたい。
@社民党は小さいが、色々な市民運動と連携して運動をつくりあげて、社会状況を変えていきたい。
(2)日本共産党愛知県委員会柏木書記長
@選挙の総括であるが、緑の党の機関誌に「自民党の圧勝と共産党の躍進」とあるが、そう考えている。自共対決の時代が始まっていると考えている。
@「対決と提案と対話」を掲げてやっている。県内12の地区委員会が先頭に立って街頭で秘密保護法廃案をめざして頑張っている。
@将来的には国政レベルで政策が一致できる政党が出てくると思う。国政の大きな課題・政策で共闘しながら、共同を拡げていきたい。
@3年後の選挙であるが、共産党として全国で5議席以上をとる、愛知でもとることを目指している。衆議院も候補予定者を決め、スタートしている。
要求の一致を拡げていく中で、基本問題・政策で一致すれば共同も考えるというのが、共産党の姿勢である。
(3)緑の党・東海長濱共同代表
@参院選であるが、力不足、知名度不足、みどりの風との混同があった。またメディアの新しい政治団体に対する取り扱いの不平等を感じた。総務省に対して「新しい政治団体が出ても選挙期間中は平等にすべき」と申し入れたが、「メディアが強すぎる。これ以上どうにもならない」という回答。
@三宅洋平さんが活躍し、17万票。政治に興味のなかった若者たちが興味を持ってくれたことがよかった。
@今後であるが、政治スクールを三宅さんと共同で行っていく。三宅さんを呼んで、音響を使った「選挙フェス」を地域で行い、考える企画もやっていきたい。改憲の懸念があるので取り組む必要。緑の党・フィリピンの人が来日。アジアを中心に「国際軍縮連合」をつくって、武力を減らしていく連合がつくれないか、来年3月に会議で提案していくことにしている。戦争屋が経済を握っている中で、私たちの新しい経済を、世界が共生・共同していく地球生態系本位の経済をつくっていこうということも提案していきたい。
(4)新社会党愛知県本部保田書記長
@3人の方の話を聞いていて、選挙共闘をここで考えたいと思う。共産党の八田ひろこさんが出る時、共産党との共闘を目指したことがあったが、実現できなかった。その後ずっと共闘を考え続けてきた。地方議員は100人いるが国会議員はゼロ。共闘が大きな力と思う。
@参院選であるが、全国的には社民党と連携した。アベノミクスが成長戦略ということで飲み込まれていった。現実は非正規雇用労働の仲間が大変な状況にある。政治問題が語られにくい状況がある。アベノミクスに疑問を持っている人たちが棄権をした。あきらめ感が出ている(読売新聞は「黄金の3年間」としている)。
@今後であるが、3年後も含めて、共産党さんには国政レベルでも県レベルでも、窓口を開いて欲しい。
3.討論
(池住コーディネーター)
政党支持運動ではなく、政策支持運動である。施策をすり合わせ、共通するものを練り上げていくことを、今日スタートさせてやっていきたい。
(K:緑の党)
@議論の材料を提供したい。①党人でない人にお願いしたい。選挙制度を抜きにして政治を考えられない。市民の側から見て、衆参の選挙制度をどうすべきかを全国的に議論して提案をして欲しい。②政党側の問題として、緑の党とみどりの風で、緑として統一名簿を提案したが、遅すぎた。共産党も含めて統一名簿方式を考えていくべきではないか?
(B)共産党では(今回次点だった)Mさんが参院選挙直後からすでに動いている。社民党は社民党の事情がある。統一候補ということになると、今すぐというわけではないが、Mさんに降りてもらう必要がある。その気にさせる私たちの運動が必要だ。若い人に頑張って欲しい。
(G)①辺野古・大浦湾お埋め立て問題が緊急の問題であるが、秘密保護法が成立したら沖縄が大変になる。②改憲阻止、脱原発という二つの柱で何故一本化できないのか?新社会との方がいわれたが、なぜ共闘が成立しなかったのか?あきらめざるを得ないのか?
(保田:新社会党)10数年前に、護憲のことで共産党と共闘できることが多いと考え、成瀬昇さんに間に入ってもらい、申し入れた。文書で政策協定しようということで文書づくりをしたが、中央レベルの話で、国政選挙において県レベルでの協定は現段階では難しいということであり、政策協定ができないままに一方的に支持をした。県レベルでも考えて欲しいと思っている。
(柏木:共産党)経過はその通り。「憲法を守る愛知の会」として政党・市民団体が交流・共闘している。しかし、国会議員は国民全体に責任を負うので、国政レベルでの政策が議論される。結局中央レベルでの一致ができず、うまくいかなかった。今後も国政レベルで基本問題での一致が必要と考えている。ただし、国会内では個別に共闘を行っている。
(N)統一候補もできるのではないかと受け取ったが・・・
(保田:新社会党)沖縄は、統一候補。愛知でも統一候補にして欲しいと希望している。
国政レベルでの政策の一致が必要とのことだが、我々は共産党と中央レベルでかなり一致していると思うのだが。
(A)革新懇談会は3本柱を掲げているが・・・
(柏木:共産党)革新懇談会は、市民団体と共産党とで構成している。3本柱とは、暮らし、平和、民主主義。憲法を守ること、」大企業中心の政治から国民中心の政治をということで、共同候補はあり得ると思う。
(Y)社民党は、「脱原発基本法」を提案した。6会派が賛成し、民主党55名も賛同した。ここの他の3人の方はどう考えているのか? 共闘できるのか?
(A)選挙では共産党が焦点になる。国を救うという点から話し合いができないのか?人間は変わりうる。過去にこだわらずに前進するということにして欲しい。
(柏木:共産党)①脱原発基本法では、志位委員長が福島党首と二人並んで脱原発でやっていこうと確認した。②沖縄では、社会大衆党を間に挟んだブリッジ共闘である。
(S)愛知から立った人は、愛知県民の意思を踏まえてやって欲しい。2本柱で共闘・連携というのが県民の総意なのだから、そのこと重視して欲しい。
(G)沖縄から見ると、石破に脅かされて5人の自民党国会議員が「普天間基地の県外移設」から離脱し、切迫している。我々の足下まで切迫して来ていると思う。組織論だけで考えないで欲しい。市民の立場で考えて欲しい。
(保田:新社会党)(相手が)共産党しかないから共闘しようとしたのではない。共産党とやりたいということでやった。沖縄はブリッジ共闘。愛知でもやりたいからここにいる。地方と国政?(中央?)とは色々とねじれが増えていると思う。
(Y)障害者自立支援法のことと同じで、自公民は障害者の声を裏切ってきた。国民の6割は福祉の充実をと考えている。この会が2本柱で共闘をというのはよくわかる。選挙制度もあるが、そうしないと福祉制度は進まない。愛知県知事選でもやって欲しい。
(伊藤:社民党)@以前は社会党も共産党も強くて社共共闘で市長選などをやってきた。国政レベルではなかった。相当慎重な議論が必要。「共産党、社民党、みどりの風の票を合わせれば、みんなの党の票よりも多く、当選する可能性もあった」(市民の会事務局報告)と書かれているが、必ずしもそのように投票するわけではない。社民党やみどりの風が出てやったから共産党への票も増えたと考えている。共産党だけだと、そっぽを向く人もいる。
@共産党は大きくて(例えば99%)、他の政党や市民は本当に小さい(1%)。共闘というが、どういう共闘か考えていく必要がある。3年後の選挙であるが、社民党は今は候補者を出す可能性もあるし、おろす可能性もある。
(長濱:緑の党・東海)@緑の党は、90ヶ国にネットワークを持ち、6つの理念でつながっている。その中に、市民参加型の民主主義というのがあり、ここが他の党と違っているところ。直接政治に参加していけるシステムをつくっていけば、もっと政治がよくなると思う。
@国民の権利を奪う憲法改悪については絶対に反対のだが、国民の権利をより良くしていく憲法改正には反対ではない。
(池住:コーディネーター)@市民が政党に要望するのも大事だが、私たち市民がやらねばならないこともあるし、力量を高める必要もある。今後、憲法、原発、選挙制度などで、討論会を持ちたい。
(中谷:基調講演者)@政党の論理、組織の論理だけを主張しては、大きな目標を見失うこともあり得ることを踏まえるべきだと思う。
@運動は、情勢を固定的に見ないで欲しい。力関係を変えるのが運動、どのようにすれば力関係が変わるか考えよう。
上記の.ワードファイル